(NASA/JSC)
イタリアのベネチア(英語名:ベニス)を国際宇宙ステーションから見た様子です.2007年3月の撮影です.
ベネチアは「水の都」として世界的に有名な観光地です.場所をこちらの地図でご確認ください.
私も以前訪れたことがあり,歴史ある街並みが印象的でしたが,宇宙から見るとまた違った印象に見えます.
宇宙からの写真では,この街がラグーン(潟)の中に発達している様子がよく分かります.ラグーンとは,湾が外海からある程度隔てられて湖泥化した湿地帯のことです.
この写真では右手にアドリア海が広がっていて,潮の干満によってラグーンの中には無数の島が現れたり沈んだりします.
歴史的には,6世紀頃に始まったゲルマン民族やフン族の侵入に伴って,湿地帯だったところに住民が避難して生活を始めたのがベネチアの始まりとされています.
画面中央の大きな島がベネチアの本島です.家々の屋根のレンガ色が島一面を覆っているのが印象的です.
中央に逆S字型の大運河(カナル・グランデ)が走っています.ベネチアは車の進入が禁止されており,大小の運河が発達していることから,船が主な交通手段となっています.観光用のゴンドラも写真などでよく見かけますね.
本島の西端(左端)に見えるグレーの長方形の地形は港湾施設です.その北側に鉄道の駅があり,写真ではそこから北西に向かって伸びる線路が細長く見えています.この鉄道がベネチアとイタリア本土を結んでいます.
ベネチア本島の人口は7万人に満たないのに対し,年間1200万人もの観光客が訪れます.観光客の多くはイタリア本土から鉄道あるいは船で訪れます.ラグーンのあちこちに,船の航行でできた白波を見ることができます.
「ベネチアとそのラグーン」は1987年に世界遺産(文化遺産)に登録されています.
しかし,近年ベネチアでは,地盤沈下と地球温暖化による海面上昇の影響が深刻になっており,高潮によって低地のサン・マルコ広場が水没する回数が確実に増えてきているとのことです.このまま温暖化による海面上昇が進むと,将来ベネチアの街がアドリア海に水没してしまうのではないかと危惧されています.
この衛星写真を見ると,何とかしてそんな事態にはならないようにしなければと思わずにいられません.