ソンホワ川と無数の三日月湖

ソンホワ川

(NASA/GSFC/METI/ERSDAC/JAROS, and the U.S./Japan ASTER Science Team)

この写真は,中国・黒龍江省の省都,ハルビン市のやや西側の地域を撮影したものです.

場所はこちらの地図でご確認ください.撮影された概略の位置を赤丸で示しています.

写真の左下から右上にかけて(南西から北東へ向けて),ソンホワ川(松花江)が激しく蛇行しながら流れています.主流の脇にはいくつもの細い支流も見えています.

何といっても注目されるのが,川の周辺に無数に折り重なるように見られる弧状の地形です.まるで大きな刷毛で弧を描くように何度もこすったように見えます.これらは,ソンホワ川の流れによってできた三日月湖とその名残の地形です.水面が鮮やかな青色や水色に輝いて見えるものもあります.

三日月湖とは,蛇行する河川の湾曲がだんだん大きくなり,大水などをきっかけとして湾曲部をショートカットする直線的な流れに変わり,川筋から切り離された湾曲部が三日月型の湖沼となって残ったものです.

川の湾曲がだんだん大きくなっていくのは,湾曲部の外側では水流が速く,内側では遅いためです.その結果,内側には土砂が堆積し,外側の川岸は侵食されていき,徐々に川の湾曲の度合いが大きくなっていきます.

この地域は高低差が非常に少なく平坦なため,長い年月の間に川が様々な方向に蛇行を繰り返し,無数の三日月湖を形作ったと考えられます.

写真で三日月湖のある地域の外側には,矩形の田園が広がっています.三日月湖の円弧と田園の矩形が,動と静を表わすように対照的で面白いですね.

今回ご紹介した黒竜江省は,中国でも水資源の豊かな省の1つで,省全域に河川や湖が多く存在します.

しかし残念なことに2005年の11月,隣の吉林省で化学工場が爆発し,ソンホワ川の水質が有毒物質で汚染されるという事故がありました.ソンホワ川から飲料水を取水していたハルビン市では一時水道の給水が停止されるという事態になり,さらに有毒物質はソンホワ川の下流にあたるアムール川を経てロシア極東のハバロフスク市にまで到達しました.

その後水質は改善しつつあるとのことですが,豊かな水資源が一瞬の事故によって有毒な水に変わってしまうとは恐ろしいことです.日本も対岸の火事と見過ごすことはできませんね.

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