(Jacques Descloitres, MODIS Rapid Response Team, NASA/GSFC)
2003年2月のスカンジナビア半島の写真です.一面雪と氷に覆われ,美しい白銀の世界になっています.冬の気候の厳しさがうかがわれますね.
中央を貫く山脈(スカンジナビア山脈)を境に,西側がノルウェー,東側がスウェーデンです.スカンジナビア半島の北東にはボスニア湾を隔ててフィンランドが,南東にはバルト海を隔ててエストニア,ラトビア,リトアニアのいわゆるバルト三国があります.また,半島の南端,逆V字型の地形の対岸には,デンマークがあるユトランド半島が雲の間から顔をのぞかせています.
こちらの地図で位置関係を見てみましょう.撮影範囲を枠線で示しました.
スカンジナビア半島西側,ノルウェーの海岸線に目を向けると,入り江が深く内陸部に切り込んでいる地形,フィヨルドを数多く見ることができます.
フィヨルドが特に発達しているノルウェーの南西部の様子を,夏の写真で見てみましょう.
(Jeff Schmaltz, MODIS Rapid Response Team, NASA/GSFC)
フィヨルドは,幅数キロメートルの入り江が,その幅をほとんど変えずに内陸部の奥深くまで続いています.両岸は切り立った断崖絶壁で,水深も深いのが特徴です.多くのフィヨルドの水深は600メートル以上あります.
ノルウェー最大のフィヨルドは,この写真にも写っているソグネフィヨルドで,世界でも2番目の規模です.入り江は入り口から200キロメートル内陸まで続き,水深は最も深いところで1,308メートルもあります.
フィヨルドは氷河によって作られました.
氷河期にはこの地域一帯は氷河に覆われていました.氷河とは,降り積もった雪が数千年〜数万年もの間解けることなく積み重なり,自身の重みで圧縮されて厚い氷となったものです.その厚みは数千メートルにも達したと言われます.現在でも極地や高山には氷河が残っています.
重い氷河が重力によって山の斜面をゆっくりと下っていく際,地表を深く削りとり,断面がUの字型となる深い谷を作りました.
その後,今からおよそ1万年前に最終氷河期(過去何回も繰り返された氷河期のうち最も最近のもの)が終わると,地球の気温は上昇し,大部分の氷河が解け,深いU字谷に海水が侵入して現在のような海岸線となりました.
ちなみに,ボスニア湾を挟んでスカンジナビア半島の東に位置するフィンランドは「森と湖の国」とも呼ばれ,国土全体で55,000以上の湖がありますが,この湖の大部分は,氷河が後退する際の堆積物によってできたものです.
北欧の地形は氷河期の氷河によって形作られたと言えますね.