日本近海でのプランクトンの大量発生

日本近海でのプランクトンの大量発生

(Jeff Schmaltz, MODIS Land Rapid Response Team, NASA GSFC)

これは2005年のゴールデンウィーク,5月4日に撮影された,日本の中央部と周辺海域の写真です.

日本列島上空にはほとんど雲がなく,お天気に恵まれたゴールデンウィークを象徴しています.日本海側の山地が明るく白く見えるのは雲ではなく雪のようです.写真を拡大して見ると,山の稜線に沿って雪が残っている様子がわかります.ゴールデンウィークにお出かけになって,実際にこれらの山々の残雪の様子をご覧になった方もいるかも知れませんね.

目を南側の海に転じると,濃紺の海の中に,絵の具を混ぜたように明るい青色が渦を巻いているのが見られます.これは,植物プランクトンが海面付近で大量に発生している様子を捉えたものです.

この植物プランクトンの大量発生には,温度や日射量の増加とともに,春先に見られる「黄砂」が重要な役割を果たしているということです.黄砂については,「日本に飛来する黄砂」でもご紹介していますが,中国大陸の乾燥地帯で吹き上げられた黄色い砂が,上空の強い偏西風に乗ってはるばる日本までやってきて降下する大気現象です.黄砂は海上にも落下し,この黄砂に含まれる無機塩類(窒素やリンなど)が,植物プランクトンの栄養源になっているのです.黄砂は洗濯物を汚す厄介者としてだけでなく,海洋の生物にも影響を与えていたのですね.

タクラマカン砂漠

この写真は,中国西部のタクラマカン砂漠で黄砂が巻き上げられている様子です.

(Jeff Schmaltz MODIS Land Rapid Response Team, NASA GSFC)

●プランクトンとは?
プランクトンというのは,水性生物のうち,水流に逆らって自ら移動することなく受動的に運ばれる浮遊生物のことを指します.プランクトンの多くは顕微鏡的なサイズですが,クラゲなども,水の中を漂っているだけなので厳密にはプランクトンに含まれます.ただし,本来の定義とは別に,水性の微小生物のことを便宜上プランクトンと呼ぶこともあるようです.
プランクトンのうち光合成を行うものを植物プランクトンと呼びます.光合成によって植物プランクトンは,二酸化炭素,水および無機塩類から太陽エネルギーを利用して自ら必要な有機物を作り出します.植物プランクトンは食物連鎖の底辺を担い,生態系に大きな影響を与えるとともに,二酸化炭素を吸収して地球温暖化の防止にも重要な役割を果たしています.

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