(NASA/JSC)
この写真は,チベット高原南部にある「プマユムツォ湖(Lake Puma Yumco)」を,2006年1月に国際宇宙ステーションから撮影したものです.湖の大きさは長い部分で約30キロメートル,琵琶湖の半分程度あります.写真の左上方向が北になっています.
この湖は標高5,030メートルに位置しています.富士山の頂上よりはるかに高い場所にあるとは驚きですね.
栄養素が極端に少ない超貧栄養湖と呼ばれる湖で,植物プランクトンなどの生物が少ないために透明度が高く,水の色が鮮やかな青〜青緑を示しています.「空から青い宝石が落ちてできた湖」という伝説があります.
水の色は水深によって変化し,水深が深いところでは濃い青色,浅いところでは青緑色に見えます.この写真で湖の左下の部分では湖水の色が青色から青緑色に移り変わっているところが見られます.
この写真で最も特徴的なのは,湖面一面に広がる,クモの巣を絡ませたような複雑な模様でしょう.
これは,水面に張った氷が,温度変化と風の影響を受けて作り上げたものです.
この地域は一日の寒暖の差が激しく,この時期には一日の気温は平均でマイナス7度からプラス14度まで変化しています.そのため,夜間には水面が凍り,昼にはその一部が溶けるということが繰り返されます.その繰り返しの間に強風が湖面を吹き渡り,氷が砕けて移動し,ぶつかり合ったり圧縮されたりして,このような模様を形作りました.
湖の真ん中には氷の盛り上がりが南北(右下〜左上)に横たわり,橋のように岸と岸をつないでいます.これは東西方向に吹く強い風によって,氷が圧縮され隆起してできたものでしょう.
チベット高原は「世界の屋根」とも呼ばれ,ユーラシア大陸の中央に広がる世界最大,最古の高原です.平均標高は4,000メートル以上,高原の南端には世界最高峰のエベレスト(チベット名=チョモランマ)を擁するヒマラヤ山脈が連なります.
4,000万年以上前,インド亜大陸が海底のプレートに乗って北に移動し,ユーラシア大陸に衝突して押し付けたため,土地が隆起してヒマラヤ山脈とチベット高原が形成されたと考えられています.インド亜大陸はもとは南極大陸の位置にあったものが北上を続け,現在でも年に4センチメートルずつ北に移動を続けてユーラシア大陸を圧迫し続けています.
チベット高原の写真をご覧ください.
(Jacques Descloitres, MODIS Rapid Response Team, NASA/GSFC)
この写真を見ると,ユーラシア大陸に南から力が加り,シワのように盛り上がってヒマラヤ山脈とチベット高原ができた様子が想像できますね.
この写真には,最初にご紹介したプマユムツォ湖も写っていますが,どこだか分かりますか?チベット高原の南部,ヒマラヤ山脈の近くです.
チベット高原はヒマラヤ山脈と共に4,000万年前までは広大な海洋であり,その時の名残りが今,1,500個もの湖となって残っています.今回ご紹介したプマユムツォ湖もその中の一つです.