月から見た地球の出

地球の出

(Earth Observations and Image Analysis Laboratory, Johnson Space Center)

これは,1969年に月を周回飛行するアポロ11号の宇宙船から撮影された,「地球の出」と名付けられた写真です.手前に大きく見える月の大地の彼方に,我々の住む地球が姿を現しています.

人類を月面に着陸させて安全に帰還させるというアポロ計画は,1960年代から70年代にかけて遂行されました.そして1969年7月に,アポロ11号によって人類初の月面着陸が成し遂げられたのです.

私は今でもこの写真を見ると大きな感動を覚えます.アポロ計画によって人類は初めて,他の天体から地球を眺めるという体験をしました(アポロ11号に先立つアポロ8号が初めて,「地球の出」を撮影しました).月面に象徴される荒涼たる宇宙の中で,我々の地球だけがオアシスのように水をたたえて青く輝いています.

現在の有人宇宙開発は,スペースシャトルに代表されるように高度数百キロメートルの地球周回軌道のものですが,アポロ計画では地球からはるか38万キロメートル離れた月まで,片道約3日間かけて航行しました.

『宇宙からの帰還』(立花 隆/著)によると,このように遠く離れた宇宙空間から地球を眺めた時,多くの宇宙飛行士たちは精神的に大きな衝撃を受け,宇宙の中の地球の存在というものに奇跡的なものを感じるということです.アポロ計画で宇宙から地球を見た宇宙飛行士のうち,少なからぬ人が神の存在を確信し,実際に地球帰還後に伝道師になった人もいます.

科学技術の粋を集めた宇宙飛行というミッションを遂行する中で,一見科学技術とは相容れない宗教的な感覚に襲われるというのは興味深いですね.自然を科学で解明すればするほど,人間の叡智の及ばない自然の偉大さ,荘厳さに圧倒され,逆に人間の存在のはかなさに気付くのかもしれません.

蛇足になりますが,月は常に同じ面を地球に向けています.そのため,月面上に立つと地球はいつも同じ場所に見え,「地球の出」という現象は見られません.月を周回する宇宙船だけから見られる現象と言えます.

タイトルとURLをコピーしました