(NASA/GSFC/METI/ERSDAC/JAROS, and U.S./Japan ASTER Science Team)
鮮やかな緑の円が並び,まるでモダン・アートの作品のようです.
この写真は,2001年6月下旬にアメリカ合衆国カンザス州南西部の農場地帯を撮影したもので,数え切れないくらい多くの円形農場が写し出されています.
別のページで「サハラ砂漠の円形農場」をご紹介していますが,砂漠地帯と比べるとここアメリカ中西部では全体に緑があふれていますね.
アメリカ中西部の主な作物はトウモロコシ,モロコシ,そして小麦です.それぞれの作物が違った生育期にあるため,写真では緑から黄色まで様々な色合いとなって表れています.生長したトウモロコシは葉を茂らせ,鮮やかな緑色に見えています.モロコシはトウモロコシに似た作物ですが,生長が遅いためにこの時期にはまだ草丈が低く,淡い緑に映っています.一方で小麦は収穫期を迎え,黄金色に輝いています.また茶色に見える土地は,収穫を終えた耕地や休閑地です.
この農場地帯では作物の給水にオガララ帯水層と呼ばれる地下水が利用されています.オガララ帯水層は世界最大の地下水脈で,グレートプレーンと呼ばれる大草原地帯の地下30〜100メートルの深さに,45万立方キロメートルの水が蓄えられています.
この帯水層の水は化石水と呼ばれ,氷河期に長い時間をかけて地下に蓄えられたものです.しかし現在では当時の水の供給路は途絶え,土壌から極めてゆっくりと水がしみ込む程度です.そのため灌漑用水として汲み出された水は補充されることがなく,帯水層の水の枯渇が問題となっています.
帯水層の水をなるべく枯渇させないようにする工夫のひとつが,ここで見られるピボット灌漑式という灌漑方式です.中心部で地下水を汲み上げ,そこを軸に長いパイプを車輪に乗せてゆっくりと回転させながら作物に水を供給します.従来のスプリンクラーのように広く空気中に水を散布することがないため,蒸発による水の無駄な消費を抑えることができます.パイプを回転させるために農場が円形をしており,ここの円形農場の直径は800〜1,600メートルあります.