(Julie A. Robinson, Earth Sciences and Image Analysis Laboratory, Johnson Space Center)
この写真は,高度360キロメートルの軌道上にある国際宇宙ステーションから月を撮影したものです.
画面の下には純白の雲海が見え,上には暗黒の宇宙空間が広がっています.その間に,青く輝く地球の大気が美しいグラデーションを見せています.大気が高度とともに希薄になり,最後は宇宙空間へと同化していく様子がよく分かります.
地球の大気は4つの層に分類され,地表に近い方から対流圏,成層圏,中間圏,熱圏と呼ばれています.
対流圏は地表から高度約12キロメートルまでの範囲で,空気は対流によって常に混じりあっています.雲が発生するなど様々な天気現象が見られ,高度が上がるにつれ温度は低下します.ジェット旅客機が飛ぶ高度は対流圏の上部,高度約10キロメートル付近です.
地表で温められた空気は上昇しつつ冷やされますが,高度約12キロメートル付近に達するとそれ以上冷えなくなり,上昇もしなくなります.そこから上の,高度50キロメートルまでの範囲を成層圏と呼びます.成層圏は途中まで温度はほぼ一定(マイナス60度ほど)で,高度20キロメートルを超えると紫外線の吸収により温度が上昇します.成層圏の最上部はマイナス10度ほどになります.また成層圏内の高度20〜25キロメートルにはオゾン層があります.
中間圏は高度50〜80キロメートルの範囲で,再び高度の上昇に伴って温度が低下し,最上部ではマイナス80度ほどになります.この付近が大気の中で最も低温な場所となります.
高度80キロメートルから上は熱圏と呼ばれ,オーロラが発生するのはこの層です.熱圏では大気が太陽からの電磁波や電子エネルギーを吸収して温度が高くなり,高度1000キロメートル付近の温度は約1000度に達します.
熱圏を超えると真空の宇宙に同化していきますが,大気と宇宙との間に明確な境界があるわけではありません.地球大気の研究者は地上から1000キロメートル付近までを大気圏と考えていますが,宇宙開発に携わる研究者は高度100〜150キロメートルを超えると宇宙ととらえています.それは,その高度になると大気が極めて薄くなり宇宙船や人工衛星との摩擦が無視できるほどに小さくなるからです.国際宇宙ステーションやスペースシャトルの高度は300〜500キロメートル,地球観測用の人工衛星の高度は目的に応じて350〜1400キロメートルとなっています.