(Jeff Schmaltz MODIS Rapid Response Team, NASA/GSFC)
この写真は2005年5月にアラビア海を撮影したものです.
写真の範囲はこちらの地図でご覧ください.
写真の中央付近の海面が太陽の光を反射して銀色に輝いて見えています.その中に,明るい帯と暗い帯が連なって縞模様のように見えている部分があります.これは一見,海面の波のように見えますが,実際はそうではありません.帯と帯の間の距離は10キロメートルくらいあり,その距離からしても通常の波ではないことがわかります.
この海面の模様は,大気重力波と呼ばれる現象によって現れたものです.
例えば風が山脈を越える時のように,大気に何らかの力が働いて上昇すると,上昇した部分は周りの大気より濃くて重いために,重力による下向きの力を受けて下降を始めます.下降した大気は慣性によって最初の位置より低く低下し,今度は周りの大気の方が重いために,浮力を受けて再び上昇します.このようにして大気が上下動を繰り返し,その動きが波のように伝わっていく現象が大気重力波です.
大気重力波の一番低くなった部分が海面に触れると,海面は乱れ波立ちます.そのような海域では太陽光は散乱されてしまうため,宇宙から見ると暗く見えます.一方,大気重力波の頂点付近の下の海面は穏やかになり,太陽光は強く反射されて明るく見えます.このようにして明るい帯と暗い帯が交互に現れ,縞模様のように見えるわけです.
この海面の模様はスケールが大きいため海上からは認識することができず,宇宙から見て初めて分かる模様です.
大気重力波は雲の発生にも影響を及ぼします.雲は上昇気流で発生し下降気流で消滅するため,大気重力波が発生している場所では条件によって縞模様の雲が発生することがあります.
(NASA/GSFC/LaRC/JPL, MISR Team)
この写真は,インド洋上で大気重力波によって縞模様の雲が発生している様子を捉えたものです.まるで池に小石を投げ入れた時のように美しい波紋を形作っていますね.