ニュージーランド,フェアウェル・スピット(砂州)

ニュージーランド,フェアウェル・スピット

(NASA/GSFC/METI/ERSDAC/JAROS, and U.S./Japan ASTER Science Team)

この写真は,ニュージーランド南島の北端部を撮影したものです.真っ青な海と緑豊かな半島,そして半島の先端から東側(写真の右方向)に細長く伸びた陸地が美しいですね.この細長く伸びた部分が,フェアウェル・スピットと呼ばれる地形です.

スピット(spit)とは日本語で砂州または砂嘴と言い,沿岸の海流によって運ばれた砂や礫が,半島や岬から海に向かって堆積し,細長く突き出るように形成された地形のことです.日本では,京都府宮津市の景勝地,天橋立(あまのはしだて)が有名です.

フェアウェル・スピットの長さはおよそ30キロメートルあります.天橋立が3.3キロメートルですから,その10倍近い長さということになります.

砂洲の付け根の部分はフェアウェル岬と呼ばれています.これらの地名は,1770年にキャプテン・クックがニュージーランドを去る際に“フェアウェル(さらば)”と言ったことから付けられたそうです.

写真をよく見ると,砂州の北側半分が灰色で,南側半分が緑色になっているのが分かります.これは,北側には砂丘と砂浜が広がっており,対照的に南側には植物が生育しているからです.

砂州の南側に広がる海はゴールデン湾ですが,砂州に近い部分の海の色が変化しているのが分かります.この地域は干潟になっていて,潮の満ち干によって海に沈んだり現れたりします.この写真では,海面下に沈んだ湿地帯の変化に富んだ地形を観察することができます.潮位が変化する時に海水が流れる道筋がくっきりと描かれ,まるで水面下に山脈や渓谷があるように見えますね.

フェアウェル・スピットの干潟には80種を超える野鳥が生息しており,野鳥の楽園となっています.その中には東アジアとオーストラリアを行き来する渡り鳥も含まれます.日本で見かける渡り鳥の中には,フェアウェル・スピットからやって来た鳥もいるということですね.

そのように野鳥の生息にとって重要なフェアウェル・スピットの干潟は,貴重な湿地帯生態系として,ラムサール登録湿地として登録されています.

●ラムサール登録湿地とは?
1971年にイランのラムサールという町で,「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」,通称ラムサール条約が18ヶ国の間で締約されました.この条約は,水鳥の生息地を守るために湿地の生態系を保護しようとするもので,現在では日本を含む約130ヶ国が締約しています.締約国には,自国にある湿地を条約事務局に登録し,保全を図っていくことが義務づけられています.登録が可能なのは,豊かな環境で重要な湿地として国際的に認められたエリアに限られます.

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