厳冬のベーリング海とすじ状の雲

厳冬のベーリング海

(Jesse Allen, NASA, Earth Observatory, using data obtained from the Goddard Earth Sciences DAAC.)

これは,アラスカとシベリアの間にあるベーリング海の様子を2006年1月20日 に撮影したものです.

写真の範囲はこちらの地図でご確認ください.

写真の範囲に大陸は含まれていません.そうです,写真の右上全体が陸地のように見えているのは,じつは海が凍っているのです.

そしてその氷の部分から吹く風によって,凍っていない海の上に凄まじい数のすじ状の雲ができています.

氷上から吹き出した冷たい風が,海の上の空気中の水分を凍らせて小さな雲の固まりをたくさん作り出します.生じた多数の雲が強い風に吹かれて同じ方向に並び,このような光景が形作られます.

NASAはこの雲の様子を「美しい日本庭園の枯山水のようだ」と述べていました.なかなか洒落たことを言いますね.

日本でも冬になると,シベリア大陸から吹き出す北西の季節風によって日本海にすじ状の雲が現れます.天気予報でもお馴染みの光景ですね.

ところで先のベーリング海の写真の中に,セント・マシュー島という細長い島が氷に埋もれるように写っています.周りの氷とほとんど一体となってしまって分かりづらいですが,写真の上の方です.地図と見比べてみてください.この島はアラスカの本土から最も遠く離れた無人島で,海鳥たちのメッカとなっています.

ベーリング海をさらに広範囲で撮影した写真を見てみましょう.撮影日は先の写真の翌日,2006年1月21日です.

厳冬のベーリング海(広範囲) 

(Jesse Allen, NASA, Earth Observatory, using data obtained from the Goddard Earth Sciences DAAC.)

この写真では,雲の並び方から大気の大きな流れの様子を知ることができます.

写真の左上に見られる,同心円状の雲列の中心には高気圧があり,時計回りに空気が吹き出しています.地球の自転の影響で北半球では高気圧からの空気の吹き出しは時計回りになります.その右側の部分が上の写真で見た領域に相当します(写真の方向が少し異なっています).

写真の右下には低気圧があり,中心に向かってこちらは反時計回りに空気が吹き込んでいます.低気圧への吹き込みは北半球では反時計回りとなります.

通常は高気圧付近では雲が少なく晴天になり,低気圧付近では雲が発達して天気が悪くなります.しかしこの時の気象状況では,高気圧付近でも気温と空気中の水分の関係で雲列ができ,空気の流れが良く分かる状況になっています.

 

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