アラル海の波状雲

アラル海の波状雲

(Jeff Schmaltz, MODIS Rapid Response Team at NASA GSFC)

2009年3月,中央アジアのアラル海上空に現れた雲を国際宇宙ステーションから撮影した写真です.

アラル海の場所はこちら.

エメラルド色に輝くアラル海の水面の上に,真っ白い雲が美しい波紋を作り,その波が南東の方角(画面右下)へと続いています.

波のような雲−波状雲−はしばしば見られる現象ですが,この写真の波状雲はアラル海の海岸線の形がそのまま波の形となっている大変珍しいものです.

波状雲は,空気の上下の動きが連続的に伝わっていく時にできる雲です.

空気の上下の動きは様々な要因で生じますが,例えば風が山にぶつかって空気が上方に押し上げられると,押し上げられた空気の塊は周りの空気より密度が濃く重いため,重力によって下方へ引き戻されます.引き戻された空気は慣性によって元の高さより低く下がり,そこでは周りの空気より薄く軽いために再度上方へ押し上げられる・・・これが繰り返されることにより空気の上下の動きが波のように風下に伝わっていくことになります.

そして空気中の水蒸気が,上方に移動した際には温度が低下するために凝結して雲を作り,下方に移動した際には温度が上昇するために蒸発して雲が消えます.このようにして雲のある部分とない部分が畑の畝(うね)のように交互に現れて波状雲となります.

それではこの写真の波状雲では,何がきっかけとなって空気の上下動が生じているのでしょうか?

アラル海は近年急速に水量を減らし,湖の面積が縮小していることでよく知られています.そのため海岸線の部分では陸から湖に向かってかなり急激に標高が低下しています.つまり上で述べた山にぶつかる場合とは逆に,湖に向かって風が吹くと海岸線で急に高度が下がるために空気が下方へ引き下げられ,それが上下動の波を生じる要因の一つになっていると考えられています.

アラル海については,「アラル海の恐ろしいダストストーム」もご覧ください.

大気の波については,「アラビア海の大気重力波」でもご紹介しています.

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