南アフリカの隕石クレーター,フレーデフォート

フレーデフォート・ドーム

(データ提供:Global Land Cover Facility, University of Maryland;  写真作成:筆者)

写真中央に,円形の隆起構造がはっきりと見えますね.これが地球表面で最大かつ最古の隕石クレーターとして知られる,南アフリカのフレーデフォート・ドームです(ドームとは隆起した地形を意味します).

円周の約半分が地形として良く残っており,右下の半円部分は消失してしまっています.よく見ると隆起構造はしわのようになっていて,隕石の衝突時に地質に圧力が加わった様子を想像することができます.

地球上には隕石の衝突によってできたと確認されている地形が100ヶ所以上存在します.月面に見られる無数の隕石クレーターと比べるとはるかに少ない数ですが,それは,地球上では水や空気による浸食作用や地質活動などのため,衝突で作られた地形が変化して分からなくなってしまうことが多いためです.

この円形の隆起の直径はおよそ40〜50キロメートルです.さらにその外側に,直径120〜140キロメートルほどの同心円状の隆起があり,いわゆる多重クレーターと呼ばれる構造になっています.外側の隆起は写真の上部に見られるのですが,ちょっと分かりにくいですね.

フレーデフォート,レーダー

(Shuttle Radar Topography Mission, NASA/JPL)

そこで,この写真をご覧ください.これはスペースシャトルからのレーダー観測によって,土地の凹凸を調べたものです.この写真を見ると,同心円の大小2つの円形構造がよく分かります.

形成時のクレーター全体の大きさは,写真よりもさらに大きく直径約300キロメートルと見積もられています.300キロメートルと言うと東京から名古屋までの距離に相当しますからその大きさには驚かされます.

さらに,クレーターが形成された年代は今から20億2000万年前と考えられています.20億年以上前!?・・・想像を絶する時間ですね.地球が誕生したのが46億年前と言われていますから,地球の年齢の約半分の時に衝突した隕石の跡を,今見ていることになります.

フレーデフォート・ドームは,南アフリカの都市ヨハネスバーグの南南西約120キロメートルのところにあります.位置はこちらの地図でご覧ください.

隕石が衝突した土地ではしばしば貴重な鉱石が産出します.ここフレーデフォートの地下には金が豊富に含まれ,世界最大の金の埋蔵地となっています.

フレーデフォート・ドームは,2005年にユネスコの世界自然遺産に登録されました.

●隕石クレーターの証拠は?
円形の地形が認められるだけでは,隕石の衝突クレーターと断定することはできません.火山の噴火などによっても円形の地形が作られるからです.地質を調査し,隕石に由来する特有の鉱物組成や,“衝撃変性”と呼ばれる特徴的な損傷が見つかれば,隕石クレーターである有力な証拠となります.フレーデフォート・ドームも最初は火山性の爆発によるものと考えられていましたが,鉱物学的証拠が蓄積され,隕石クレーターであることが明らかとなりました.

●地球の歴史上最も新しい隕石の衝突痕の一つ,「アメリカ・アリゾナ州,メテオ・クレーター」もご覧ください.

タイトルとURLをコピーしました