アフリカ大陸に落ちる日食の影

アフリカ大陸に落ちる日食の影

(MODIS Rapid Response Team at NASA GSFC)

2005年10月3日,アフリカとヨーロッパの一部で日食が観測されました.この写真はその時の地上の様子を撮影したものです.アフリカ大陸に落ちる日食の影が捉えられています.

日食の影は,アフリカ東部のエチオピア,ケニア,ウガンダ,そしてスーダンとコンゴ民主共和国の一部を覆い,それらの地域が暗闇に包まれています.

写真の範囲を地図でご覧ください.

日食とは,太陽と月と地球が一直線上に並び,地球から見ると月が太陽を覆ってしまう現象です.月と太陽の見かけの大きさが偶然にもほぼ同じであるために起こる現象です.月が完全に太陽を覆ってしまう皆既日食と,月の周りに輪のように太陽がはみ出して見える金環日食があります.今回の日食は金環日食です.

いずれの日食も,月の影が地上を移動し,その影が落ちている限られた地域で日食が観察されることになります.

日食ではない通常の時,この地域がどのような様子なのか写真で見てみましょう.次の写真は,日食の写真の右下に,通常の写真をはめ込んで合成したものです.

日食時と通常のアフリカ大陸

(MODIS Rapid Response Team at NASA GSFC,写真合成:筆者)

通常時の写真では緑が多く茂っているのが見え,ところどころ,大地が露出している部分は褐色に見えています.

日食時の写真では,これら緑地の部分は真っ暗でほとんど見えず,大地の露出部分はかすかに赤味を帯びて見えています.今回の日食は金環日食であるため太陽光がわずかに地表に届いています.これが皆既日食であれば,さらに深い闇となることでしょう.なお,赤い小さな点がいくつも見えるのは,衛星が高温部(野焼きや火災など)を検出した印です.

日食の影は,写真の左上から右下へ移動しています.写真の上部はサハラ砂漠ですが,その左上隅の部分は既に影から抜け,通常の太陽光に照らされています.砂漠の右側の部分にはまだ影が残り,若干暗く写っています.

上空にある雲に着目すると,影のグラデーションの様子が分かります.明るく白い雲は太陽光を良く反射するため,少ない太陽光でも比較的良く見えます.影の辺縁部,写真では右上から左下にかけての領域では雲はまだ白くはっきりと写っていますが,影の中心部である写真右下の部分に近づくにつれ,暗くなっている様子が分かります.

宇宙から見た日食の影」では,国際宇宙ステーションから撮影した,地中海に落ちる皆既日食の影をご紹介しています.

日本に向かう日食の影(2009年7月22日)」では,46年ぶりに日本の陸地に落ちることになった皆既日食の影をご紹介しています.

●皆既日食と金環日食
皆既日食と金環日食の違いは,月の見かけの大きさが一定ではないために生じます.地球の周りを回る月の軌道が,完全な円ではなく楕円であるため,地球からの距離が近くなったり遠くなったりします.月の距離が近い時,つまり見かけの大きさが大きい時に皆既日食となり,距離が遠くて見かけの大きさが小さい時に金環日食となります.また,月が太陽の一部だけを隠す場合もあり,これを部分日食と言います.

タイトルとURLをコピーしました